『あんぱん』第25週で、たかしはアンパンマンを題材にミュージカルを上演します。
作品名は『怪傑(かいけつ)アンパンマン』。
原作は『詩とメルヘン』で連載された『熱血メルヘン怪傑アンパンマン』でした。
この『怪傑アンパンマン』は『それいけ!アンパンマン』とは大きく内容が異なります。
今回は、『怪傑アンパンマン』のあらすじと結末を紹介します。
そして現在のアニメ版との違いをわかりやすく解説します。
怪傑アンパンマンとは?

『怪傑アンパンマン』は、1976年に上映されたミュージカル作品です。
原作は『詩とメルヘン』で連載された『熱血メルヘン怪傑アンパンマン』です。
主人公のモデルはやなせたかし
『怪傑アンパンマン』の主人公は、やなせたかしさん自身がモデルです。
物語では、売れない漫画家のヤルセ・ナカス。
編集者のミテ・ミルカが登場します。
ふたりのキャラクターには、次のような由来がありました。
ヤルセ・ナカス:やなせたかしさんがモデル
⇒名前の由来は、ある女優から言われた言葉
ミテ・ミルカ:小松暢さんがモデル
⇒名前の由来は、編集者の口癖の「見てみるか」
ミュージカル化で転機に
『怪傑アンパンマン』の転機は、1976年のミュージカル化でした。
前身の『熱血メルヘン 怪傑アンパンマン』は大人向けに描かれました。
しかし、構想不足で1年ほどで終了。
当時は、評判もほとんど残りませんでした。
そんな中、作曲家のいずみたくさんが舞台化を提案。
やなせたかしさんが脚本と作詞、いずみたくさんが作曲を担当しました。
『怪傑アンパンマン』は舞台作品として公開され、その後シリーズ化。
なんと16年間も続く人気作となりました。
観客を前にしたことで、やなせたかしさんはあることに気づきます。
「物語には悪役が必要だ」ということです。
ここで誕生したのが、ばいきんまんでした。
以降、物語は改善を重ね、アンパンマンの完成度を高めていきました。
怪傑アンパンマンのあらすじ

パン作りの名人『ジャムおじさん』は、毎日あんぱんを焼いていました。
ある日、窯から取り出したあんぱんが、不思議な子どもの姿に。
これが『アンパンマンの誕生』です。
アンパンマンの顔はあんぱんでできていました。
アンパンマンは、マントを羽織って空へ飛び立ちます。
目的は、世界中のお腹をすかせた子どもや、飢えに苦しむ人を救うこと。
冒険の中で、アンパンマンは無人島の科学者・キリギリ博士を助けました。
雪山で遭難した山男を救うこともありました。
しかし、そこに悪者のゴリラマンが登場。
アンパンマンを利用して金儲けを企みますが、ジャムおじさんは拒否。
怒ったゴリラマンはパン工場を壊そうとします。
しかし、仲間たちの抵抗にあい、思うようにいきませんでした。

アンパンマンの最初の敵が、ばいきんまんではなかったのは意外でした。
ちなみに『ゴリラマン』というキャラクターは、実はアンパンマンにも登場しているんです。
怪傑アンパンマンの結末


アンパンマンは、戦争で飢えた子どもたちを助けに向かいます。
しかし途中で攻撃を受けて、命を落としてしまいました。
ジャムおじさんや仲間たちは深い悲しみに包まれます。
みんなは「もう一度アンパンマンを作ってください」と頼みました。
しかし、材料となる切れはしがなく困り果てます。
そのとき、奇跡が起こりました。
空からマントの切れはしが舞い降りてきたのです。
ジャムおじさんたちは、大喜びしました。
ところが、ゴリラマンたちがそれを奪おうとして大騒動に。
ジャムおじさんたちは、みんなで『アンパンマンの歌』を歌って応援します。
その声に応えるように、アンパンマンは再び生き返りました。



アンパンマンが亡くなってしまう展開は、本当に驚きです。
現在のアニメ版からは想像できない設定ですね。
怪傑アンパンマンとアンパンマンの違いは?


『怪傑アンパンマン』と『それいけ!アンパンマン』には、大きく5つの違いがあります。
- 対象
- テーマ
- 表現
- 世界観
- 敵キャラ
対象
両作品では、対象となる読者と視聴者が大きく違います。
怪傑アンパンマンは、大人向けに描かれた作品。
飢餓や社会矛盾といった重いテーマが特徴です。
一方、アンパンマンは、幼児を対象にした作品。
物語はシンプルでわかりやすく、安心して楽しめる内容になっています。
テーマ
両作品に共通するのは『正義』と『愛と勇気』です。
ただし、その描き方には大きな違いがあります。
怪傑アンパンマンは「正義とは何か?」という問いを投げかける作品。
最大の敵は「人間の心」です。
そこには善と悪が同時に存在し、正義の複雑さを描いています。
アンパンマンは「正義は愛と勇気で人を守る」という答えを示す作品。
ばいきんまんを相手に困難を解決し、毎回必ず勝利する安心感があります。
子どもたちに『正義は人を守り、希望を与えるものだ』と伝えています。
表現
両作品では、アンパンマンの描かれ方が大きく異なります。
怪傑アンパンマンは、シリアスな描写が多いのが特徴です。
また、アンパンマンも高身長で大人びた姿でした。
孤独で葛藤するヒーローとして描かれています。
アンパンマンは、丸く可愛いデザインで、戦いもコミカル。
暴力や死は描かれず、子どもに安心感を与える世界観が広がっています。



アンパンマンが子どもに好かれるのは、実は『丸い顔』が理由だという説があります。
丸い形は安心感を与え、赤ちゃんでも認識しやすいそうです。
さらに、顔に目・鼻・口がハッキリ描かれていることで、視覚的にもわかりやすいのだとか。
世界観
両作品は、世界観の広がり方も大きく異なります。
怪傑アンパンマンには、漫画家や大富豪などが登場します。
現実社会を映したキャラクターが多く、社会風刺的な物語でした。
一方、アンパンマンには、食べ物や動物をモチーフにしたキャラクターがいます。
数は数百種類を超え、ファンタジー色が強い世界観が広がっています。



アンパンマンには、花や星などをモチーフにしたキャラクターも登場します。
季節やイベントを意識したキャラも多く、その時期だけアニメに登場することもあるんです。
敵キャラ
両作品では、敵キャラクターの描かれ方が全く異なります。
『怪傑アンパンマン』の敵は、人間社会の欲望や矛盾です。
クロカワのような現実的な悪役や、人間の心そのものが立ちはだかりました。
一方、アンパンマンでは、わかりやすい悪役のばいきんまんが中心。
正義が悪に必ず勝つ構図の構図がはっきりしているのが特徴です。
そのため、子どもにも理解しやすい物語になっています。
怪傑アンパンマンのQ&A


まとめ
『怪傑アンパンマン』は、1976年にミュージカル化された作品です。
原作は、雑誌『詩とメルヘン』で連載されました。
物語では、ジャムおじさんが焼いたあんぱんからアンパンマンが誕生します。
飢えた人々を助けながら冒険し、最後は命を落としながらも奇跡的に復活しました。
現在のアンパンマンと比べると、大人向けのシリアスな内容が多く描かれています。
やなせたかしさんは、時代や対象に合わせて作品を進化させました。
その結果、アンパンマンは今も子どもから大人まで愛され続けています。
両作品に共通するのは『正義』と『愛と勇気』です。
これは、やなせたかしさんが生涯を通じて伝えたかったメッセージでした。
そして今、朝ドラ『あんぱん』を通じて、その思いはさらに広く受け継がれています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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